渡仏巴里譚 ⑤ Misyへ<後編>
みゅう弟です。
ヨンヌ川沿いの小路を皆で散歩しました。家だけでなくこの辺りがどんな感じの所なのか、Iさんが案内をしてくれました。
上流の水門まで道。川沿いの景色は美しく、川の流れと木々や草花、鳥の声や近所のお宅の犬の鳴き声。行きかう人は殆ど無く僕らだけの道。
この頃になると兄貴の話しだけでなく色んな話をしておりました。皆でのんびりと歩いていると時折運搬船などが川を下っていきます。
Iさんのお仕事の話、Kさんのフランスでのオフィスの話、フランスでの生活や昔のパリの話、この辺りの地域性や暮らしている人達、日本との違い、ヨンヌ川大増水時の話。
静かな小路を皆で歩いています。今日始めて会った(と言ってもよい)大人4人と子供1人が心穏やかにこの場所を一緒に散策するのは、何と奇跡的なことか。この5人をそれぞれの関係で繋いでいた兄貴はもうこの世にはいない。亡くなってしまったからこそ繋がった、この時と場所と僕達。
兄貴がここを大好きだったのが何となく分かった気がしました。
「お兄さんがここに来てくれて、一緒に過ごした時間が一番楽しかった!」
Iさんがおっしゃってくれた、この一言が全てを表している気がします。
兄貴が静かな環境の中で、穏やかに、とても楽しい時間を過ごすことが出来た場所Misy。ただ単に「場所」としてのMisyだけがそこにあったわけではなく、そこには人がいて大切な繋がりがあったからこそ、こういう時を過ごせたのだと感じています。そしてそれは、兄貴が「自分」を取り戻すための貴重な時間だったんじゃないかと思っています。
決して表面的な感傷に浸るような悲しみにとらわれることはありませんでした。ただただ嬉しく、ただただ楽しく、心の奥底までじんわりと広がっていく不思議な心地よさを、いつまでも抱きしめていたい感触でいっぱいでした。
Iさん、Kさん本当にありがとうございました。言葉ではどうにも表すことが出来ない程の感謝の気持ちで一杯です。
またいつか。
つづく
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