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2009年11月29日 (日)

DTM

みゅう弟です。


「単なる暇つぶしをして、有り余る時間を浪費する」ことに兄貴は焦りを感じていました。なぜならそれは本当は「有り余る時間」ではなく「残された限りある、目の前に終わりの見える切実な時間」だったからです。


兄貴はそれを言葉にして表すことはなかったけれど、僕はそれをヒシヒシと感じていました。


僕は何か意味のあるイベントを作らねばといつも焦っていました。特に僕のライブに出演してもらった後、何も予定やイベント、これといったやることというのが無かったので、より一層でした。


体が不自由な状態でも出来得ること、出来得る可能性があることのひとつが音楽でした。ギターはもう弾けなくなってしまった。それでもキーボードは片手でも音が出せる。せっかく音を出すならただ単に演奏するのではなく、何か曲を作りたい。そんな風に考えていたようです。そこでPC上で演奏したり、録音したり、作曲したり出来る環境があれば身体に無理なく「意思的に」音楽に接することができると。


兄貴が買い揃えていた、DTM関係のアイテムはうまく動きませんでした。あれこれやっても音が鳴らず、音が鳴っても変な電子音等々ぜんぜんでした。

僕らのライブの前日、ミュージシャンの友人にヘルプを頼みました。彼には兄貴の状況はそれまで伝えておらず、その日初めてガンのこと、余命のこと等を話し、兄貴のPCでDTM環境を構築して欲しい旨お願いしました。僕は焦っていたので、出来ればライブが終わったら直ぐに使いたい、一度兄貴の家に来て欲しい等々本当に無理なお願いをしてしまいました。

彼は何も言わず、直ぐに状況を理解してくれ、彼の出来得る最善の提案をしてくれました。彼はその時、個人的な大きな心配ごとを抱えていたり、新しい状況に直面していたりと大変な時期でした。そんなことはおくびにも出さず、僕の兄貴のことを最優先で考えてくれ、自分ができる最善のことを僕にしてくれました。

ちょっと時間はかかったけれど、彼のヘルプのおかげでどうにかPCでの音楽環境は整いました。それまでの間も何度も、連絡をくれたり心配をしていてくれました。


兄貴が亡くなった後、「会ったことはは無いけれど手を合わせたい」と僕の家まで来てくれました。


本当にありがとう。あの時、無理なお願いをしてごめんなさい。君の心の優しさに本当に感謝しています。

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