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2008年3月11日 (火)

ひとさまの闘病記(16)

テレビも新聞もあんまり見ないし、ネットのニュースもそんなにまめにチェックするわけではないので、柳原和子さんが亡くなったことをしばらく知らなかった。

おととしの2月、食道がんを告知され入院した頃はそれなりにいろいろと調べていたので、柳原さんの著書が多くのがん患者にバイブルのように読まれているということはそれなりに知っていて、四月に外出したときに十条の古本屋で『がん患者学』を見かけたときにはいちおう手にとったんだけど、そのぶ厚さに恐れをなしたというか、もし残された時間がかなり少ないものであるのならこんなもんを読むのに使っちゃいたくないぜ、というとても前向きな理由からすぐに棚に戻してしまった。

そのあと、きょねんの3月にNHKで放送された「百万回の永訣 ~柳原和子 がんを生き抜く~」という2時間の番組は見た。柳原さんは10年ぐらいの間に体中のいろんなところに次から次へがんが出てきて治療をくりかえしていて、番組はその闘病の様子を中心に取材したものだった。

「決してあきらめることなくポジティブに治療を受けつづけることこそががん患者としての正しい道だ」という、制作者側の分かりやすいメッセージに素直に共感するひともそれなりにいたようだけど、逆に「最先端の治療が行われている日本全国の病院をはしごできる財力といろんな有名医師に「やあ、やあ」とお友だちのりで会いにいける職業的特権をもつ人だからできることだろう」というような見方も少なくなかったんだとは思う。

どちらかというと、「がんはひとごとだけど、かわいそうながん患者のひとがいっしょうけんめい闘っている姿を見て感動したい」系のひとは素直に感動し、じっさいのがん患者やその家族にはストレートには受けいれられない部分が多かったんじゃないだろうか。おれのまわりでもそうだった。

ここんとこしばらくは「ああ、おれは腸閉塞の患者なんだ。腸閉塞がまた来たら痛くてイヤだなあ」なんてことは思っても、自分ががん患者だということはころっと忘れていたんだけど、ちょっとだけ思い出してしまった、石垣はもう三日つづけて雨です。

がん患者学―長期生存をとげた患者に学ぶ がん患者学―長期生存をとげた患者に学ぶ

著者:柳原 和子
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