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2008年2月 9日 (土)

大みそかのこと(8)

10:45pm
まったく人も車もいない大みそか深夜の霞ヶ関をぬけて虎の門病院に到着。救急車からおろされる。さっ、さむい!

ここは救急指定病院ではないのでふだん交通事故の患者とかが運び込まれてきたりすることはないんだけど、おれみたいな患者のためなのだろう、いちおう救急入口というのがある。そのガラス張りの救急入り口の内側で警備員がすでに待ちかまえている。それを見てちょっとほっとしたのもつかの間。やっぱりおれは悪運と不幸と貧乏神と死神をまとめて背負っているらしい。スライド式の扉が開かないのだ。

警備員があわててなんとか開けようとするのだが、警備室から電動でロックされているらしく扉は微動だにしない。セキュリティがしっかりしてるのはいいんだけどさあ。

「さっ、さむいよお!いっ、いたいよお!」
10秒、20秒、30秒、せいぜいそんなもんだったんだろうけど、永遠というのはこういう感覚なのかなと思う。

「どこかほかの入口があるだろう。指示してくれればそっちにまわるから!」
救急隊員が声を荒げる。

「あっ、あの、そのですね」
警備員は扉の内側でよけいパニックになって、わけの分からないことを口ばしる。警備員がいちど扉をはなれる。警備室でロックを解除してきたのだろう。戻ってきてようやく扉が開いた。

救急治療室に運ばれる。

けっこう広い部屋で、年寄りの患者がふたりいる。血圧を測ったりしながらそれぞれナースと話をしている。なんかのんびりとした雰囲気で「救急」という感じではない。

おれはベッドに移され、若いドクターがふたりやってくる。ひとりは研修医だろう。救急隊員から簡単な説明があり引き渡される。そんな状況なのでちゃんとお礼をいえなかったのがちょっと心残りではある。

さっ、さよなら。あっ、ありがとね。

「どうしました?」
またきょうの状況を説明する。

「うちの患者さんなんですよね。ええっと・・・・・・」
おれのカルテのファイルがすでに来ていて治療履歴に目を通すのだが、なにしろ2年ちかくいろいろな治療をくりかえしてきているのでファイルはぶ厚い。7~8センチのが2冊あり、ひとめでおれがどんな患者なのか分かるようなものではないのだ。けっきょく口頭でこれまでの経緯を説明する。

もちろん説明しなくちゃ分かんないのは分かるんだけど、痛えんだよ!
おれが来る前にちゃんと読んどけよ!
そんなこと無理だってのは分かるんだけど、そんなことを叫びたい気分だった。

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コメント

病院の方は色々とマスコミで言われていますけど、日本の救急車搬送システムは、意外とちゃんとしているんですね。結構意図せざるユーモアもあるみたいだし。さて、次なる虎ノ門病院の若きドクターの対応は?生身の患者による渾身のリポートいよいよ佳境にっ!

投稿: 愛読者2 | 2008年2月10日 (日) 15時39分

おおぉぉ、ついにここまで来ましたか…。
どうして小腸の手術が必要と判断できたのか、興味津々なり~。

投稿: 愛読者1 | 2008年2月10日 (日) 21時12分

続きますね・・・

投稿: | 2008年2月12日 (火) 01時11分

これが終ったら続編で「大みそかの兄」と言うのが弟さんの執筆で始まる噂があるのですが…弟さん、期待してます。迷惑なお兄さんの醜態をばらしてやってください。三浦ブラザースが送る世界初、ガン闘病兄弟日記!弟さんの冷静な目から見た兄の姿は実はこんなふうふだった(っと、そんなのがあったらいいなっ♪て勝手に書いてます)

投稿: 勝手な読者 | 2008年2月13日 (水) 14時32分

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