大みそかのこと(7)
10:20pm
そんなわけでなんとか携帯で弟に電話して状況を伝える。
「・・・・・・ということで、まあ、大丈夫だから」
って、大丈夫にきこえるわけないよな。バックに救急車のサイレンが威勢よく鳴っているし、ほとんどうめき声のあいまに単語を断片的にならべて用件を伝えてるようなありさまだ。でも、なんとか状況は伝わったようだった。
10:30pm
「いま、御茶ノ水を通過しましたからね。もうすぐですからね。なんにもしてあげられなくて申し訳ないけど、がんばってくださいね」
救急隊員のおっさんはこんな声をかけ続けてくれている。やっぱりいいやつじゃないか。「だんなさん」の件はわすれてやろう。
「痛い!痛い!」
うめき声はもう叫びに変わっている。
入院してるとき、同室に「痛い、痛い」と声を出して家族やナースに泣き言をいっているおっさんがよくいた。夜中にナースコールを押すわけでもなく、誰がきいてくれるわけじゃないのに、呪文のように「痛い、痛い」とぶつぶついっているじじいもいた。そーいうひとたちは手術直後だとか末期がんの患者だった。
おれはそーいう声をきくと、
「けっ、痛えとか声に出したって痛みがなくなったり、楽になったりするわけじゃねえだろ」
だとか
「じじいがうるせえんだよなあ」
などという、人でなしなことをいっていた。
でも、おれはいま叫び続けている
「痛え!痛え!」
おお、そーだよ、どーせおれは言行不一致の人間なんだよ!
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
だんなさんのリアルな描写、迫力有りで凄いです。だんなさん、良い響きで殿下を改めだんなさんと呼ばして頂きます。
投稿: クルル凹 | 2008年2月 5日 (火) 19時59分
病気って早期発見が大事だから
おかしいな〜と思ったらすぐ専門医に相談すること!とかテレビでよく聞くけど
実際行くとそんなことくらいで来やがってみたいな態度とられるたりするし
病院(医者)の付き合い方って結構難しいですね〜
投稿: lily | 2008年2月 6日 (水) 01時55分
檀那・旦那
①【仏】イ.(梵語dana)布施(ふせ)。ロ.(梵語danapatiの略)仏が財産を施与する信者を呼ぶ語。施主。壇越(だんおつ)。檀家。②家人召使が主人を呼ぶ語。③妻が夫を呼ぶ語。また、妾や囲い者の主人。④商人・芸人などが得意客を呼ぶ語。⑤目上の男性を呼ぶ語。(※広辞苑第四版より)
後の救急隊員の対応を考えれば、①のロ.と思われます。
投稿: アミーゴ | 2008年2月 8日 (金) 12時51分