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2008年2月 1日 (金)

大みそかのこと(6)

10:15pm
「なるべく気をつけて運転するようにしますけど、どうしても多少は揺れますからね。苦しいでしょうけどがまんしてくださいね」
ようやく救急車が出発。これまでに要した時間は10分ぐらい、だったと思う。

「御家族とかに連絡しますか? 電話番号を教えてもらえれば救急車から連絡しますよ」
「いっ、いや、自分で連絡します」
携帯電話を取り出して弟に電話する。一瞬メールにしようかと思ったけど、手もふるえ目もかすんできているのでぜんぜん無理だった。

救急隊員にたのまず自分で電話したのは、「だんなさん」よばわりされたからばーろーとか思って意地をはったんじゃなくて、いぜん救急車から家族への連絡を救急隊員にたのんで痛い目にあったことがあるからだ。

1995年のことだからもう13年前か、こまかい話ははぶくけどとにかくおれはバイクに乗っていて事故にあい救急車で病院に運ばれていた。その車中で救急隊員から家族に連絡しておくからといわれ連絡先を伝えたのだ。病院に運ばれ、診断は骨盤の複雑骨折。骨盤が骨折しレントゲン写真で見ると蜘蛛の巣状にひびが入っている。ただ、きれいに割れているので二週間もじっとしていればくっついてくるだろうけど、それがちょっとでもずれたりすると骨が神経を突っついて半身不随になったり動脈を切って大量出血で死んじゃったりするという。

事故にあったのは金曜日の夕方で、こっちは救急隊員のことばを信じて家族に連絡がいってるもんだと思い込んでいる。それが土曜になっても誰も来ない。1ミリでも体を動かしてはいけないという状態なので誰に連絡することもできない。そのころ携帯はぼちぼち普及し始めていたけど、おれはまだポケベルしかもっていなかった。週末だから会社の方は連絡つかなくても実家には連絡がいっているはずだ。ナースに連絡してもらおうとたのんだんだけど、救急車から連絡がいってるから大丈夫ですよとのこと。

日曜になっても月曜になっても誰も来ない。

そのとき入っていたのは本来6人部屋だった病室をさらに半分ずつに区切って11人入るようにしてある、それぞれのスペースががカプセルホテルか寝台列車かというぐらい狭い、お見舞いに来た友人がまるで野戦病院だといったような、悲惨なところだった。でも、患者のほとんどが交通事故のけが人でしばらくいればなおって退院できることが分かっているのでみんな明るい。そのなかにもう元気になって各ベッドを歩き回り情報収集をしているようなおっさんがいた。そのおっさんに、どうも家族に連絡がいってないようだという話をしたところ、そのおっさんが落語に出てくるような乗りのいいおやじで、おう、そんなことならおれにまかせとけ、と電話してくれてようやく家族、そして会社などに事情が伝わったのだ。

まあ、そんな経験があったので無理しても自分で連絡したということで、どーでもいい話でずいぶん長くなってしまったのできょうはここまで。

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コメント

バイクで骨盤複雑骨折のエピソードにまたまたびっくり。救急車や病院の経験半端じゃないのですね。「きょうはここまで」いいぞ、いいぞ。その調子で、このシリーズ少なくとも10回くらいまで続くこと期待してます。もうほとんど自分がお腹痛くて救急車に乗っている気分です。

投稿: 愛読者2 | 2008年2月 3日 (日) 09時09分

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