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2008年2月24日 (日)

大みそかのこと(12)

01:50am
救急治療室は一階にあり、手術室は二階にある。二階のエレベーターをおりると大きな扉がひとつあってその向こうにハチの巣のように手術室がいくつもある。手術室がいくつあるのかは知らないけど、多い日には大小あわせると手術が50件とか行われる日もあると聞いたことがある

とても若くない方のナースはもう姿を消しているのでとても若い方のナースにつきそわれて二階へ。まえの食道の手術のときは自分で歩いていったんだけど、さすがに今回はベッドにのせられている。エレベーターをおり大きな扉のところで手術室のナースにひきわたされる……、はずなんだけど、手術室の大きな扉の前で5秒、10秒、開かない。沈黙。15秒、30秒、あれっ、この扉って自動ドアじゃなかったっけ。

ちょっとあせり始めたとても若いナースが大きな扉の横にあるインターホンで呼びかけるが返事がない。大きな扉にはくもりガラスの窓がついているんだけど内側は薄暗い。こんな時間にだれもいないエレベーターホールに暖房は入っていない。おれは手術着とT字帯のみ、出番直前の踊り子さん状態。

「さっ、さむいよお!いっ、いたいよお!」

まただよお!

一分ぐらい待っただろうか。くもりガラスの内側が明るくなって大きな扉が開き、手術室のナースが顔を出す。

「ごめんなさい。ちょっと手間どっちゃって」

照明、酸素吸入器、血圧・心電図・血中酸素濃度など手術中モニターしていなくてはいけない計器類、麻酔関係、もしもの場合の輸血用血液と、まだまだありそうだけどちょっと考えただけでも手術のために準備しなくちゃいけないことはたくさんある。今どきはメスだってレーザーだろう。とにかくそんなたくさんのことを、何人でだか分からないけど、たぶんふだんよりはかなり少ない人数で、大みそかの深夜というかなり制限された条件下で、この二時間ほどのあいだに準備してくれたわけだ。もろもろ準備ができてドクターもスタンバイした状態で救急治療室に連絡を入れたんだけど、ちょっと迎えが間に合わなかったということだろう。

いいんだ。どーせおれには疫病神と貧乏神と死神がついているんだ。もうこれぐらいのことじゃ驚かないよ。

てなわけで、こんどこそおれは手術室のナースに引き渡されて手術室に入り手術台に横たわることとなったのでした。

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コメント

答えは「準備がまだだった」でしたか…。
テレビドラマのようにはいきませんよね。

それにしても、あの小腸から想像される痛みの中でこの観察力(@_@)

投稿: 愛読者1 | 2008年2月26日 (火) 23時59分

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