大みそかのこと(5)
10:05pm
救急車に乗せられるとまずいろいろと質問される。
「だんなさん、もういちどお名前からお聞きしますね」
これは身元を確認するというよりも意識がはっきりしているかどうかを見きわめる作業だったような気がする。
「で、だんなさんね、どこが悪いんでしたっけ?」
もうさあ、ちゃんと名前も確認したんだからその「だんなさん」っていうのやめろよなあ、世話になってる身で文句をいえた筋合いじゃないけどさあ、おめえだって同じくらいの歳じゃねえかよお、とか思いながら・・・・・・
「おっ、おっ、おなかが痛いんです」
「わたしはお医者じゃないですけどね。いちおう見させてもらいますよ」
といってシャツをめくる。腹部にたて一文字の大きな傷跡を見てぎょっとする。
「だんなさん(だからもういいって(^^;)なんかこれすごい傷跡がありますけど・・・・・・」
そこで、6月に食道がんの手術をしたこと、病院は虎の門でいまも通院してること、でもこの腹痛は食道がんとは直接は関係がないような気がすること、などを説明する。それを聞いて救急隊員ふたりがなにやら相談する。
「だんなさんね(あのさあ!)まだ受け入れてくれるかどうか問い合わせてないんですけど、病院に三つの選択肢があるんですね。ひとつはいちばん近い○○病院(便秘で行ったところだ)、ここだったら30秒で行けます。次は帝京大学病院でこれは3分くらい。あとは虎の門病院で、この時間でも30分はかかっちゃうかな。これが痛み止めの点滴を打ったぐらいでなおっちゃうようなものなら近くの病院でじゅうぶんだし、逆に一刻を争うような病気で虎の門まで行ってると手遅れになってしまうということもあるし、でも手術をして入院するようなことになるようなら虎の門に行くのがいちばんなんだけど、だんなさんの(・・・・・・)様子を見るとかなり苦しそうだし、30分も車に揺られるのはしんどいでしょうし、どうしましょうか?」
どうしましょうって言われてもさあ、おれにはもうそんな判断力ねえよお!
「うーん、それじゃあ、これから虎の門に問い合わせてみて受け入れてくれるということだったら虎の門まで行くことにしましょう」
こういう場合、救急車から直接病院に電話するんじゃなくて救急センターに連絡をいれ、そこから病院に問い合わせてまたこちらに連絡が来る。なんか伝言ゲームで時間がもったいないような気もするけど、このほうが混乱が少ないのだろう。虎の門が救急指定病院じゃないってこともあったのかもしれない。でも、この救急隊員のおっさんをえらいと感じたのはこのときだ。救急センターにおれの症状、病歴などを伝えることばがじつに簡潔かつ的確だったのだ。おお、さすがプロだ、「だんなさん」の件はゆるしてやろう。
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