いつかは来ない(4)
『男の勝負』東映1966
これは監督が中島貞夫で監修がマキノ雅弘というややこしい作品。主演は村田英雄と天地茂。
終戦後、ふたりで力を合わせ千日前の復興につとめてきたテキヤの村田英雄と天地茂が悪い奴の策略で対立することになる。天地茂がけんか場に向かう。そこで客席最前列から
「そんなけんか意味がないぞ!」
こわれてしまったらしいじじいが叫んでいるのだ。
じじいはさらに叫ぶ。
「けんかするんじゃねえ!」
さすが浅草名画座である。
とうぜん
「うるせい、静かにしろ!」
という罵声があちこちから飛ぶ。。
じじいにはそんな声が聞えるわけもなく、ふりしぼるような声で
「たのむからそんなけんかはやめてくれ~」
いやあ、たのしいなあ。
てな騒ぎもやがて収まるが、映画も終わりに近づくとまたひと盛り上がり。
これは高倉健と藤純子がゲストでちょっとだけ出演していて、本筋とはあまり関係ないんだけど健さんが長ドスもってのなぐりこみまであるという豪華な映画だ。その健さんが単身なぐりこむところでじじい復活である。
「健さん、いい男だねえ。でもおれは鶴田浩二が好きなんだよ。おれはきょう鶴田浩二を見にきたんだよ」
呪文のように「おれは鶴田浩二が好きなんだよ」を繰り返している。
鶴田浩二の『やくざ囃子』はこの次の次だ。じいさん、それまでもつんだろうかと思っていたら、この『男の勝負』の上映が終わるととなりに座っていた娘さんらしき女性にひっぱられて連れ出されてしまった。あのじいさんに、いつかまた鶴田浩二の映画を見る日は来るのだろうか。
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