あなたが先輩
外来での抗がん剤治療に行ってきました。点滴で抗がん剤その他の薬を入れるのは三時間半なんだけど、検査や診察などでけっきょくは一日つぶれてしまいます。実際に点滴を入れるのは化学療法室というところで、カーテンで仕切られたリクライニングチェアとテレビのあるカーテンで仕切られたスペースで個別にやるんだけど、順番待ちの時間がけっこうあってそこでは常連のがん患者がいろいろとおしゃべりをしています。
ここでがん患者のみなさんのやりとりを見ていておもしろいなと思ったことがあって、これは入院してる時の病棟での人間関係にも共通するものなんだけど、とにかくみんな先輩後輩という関係をつくりたがるのです。見慣れない奴がいるとまずそいつのがん履歴を尋問します。そこでいつ何がんにかかったかということでその系列と上下関係が分類されるのです。
ぼくはそーいうサークルにあまり積極的には入るほうではないけれど、向こうから話しかけてくるのを拒否するほどいじけてもいないので時々はそんな会話に加わります。
ことしの7月で手術後一月半ぐらいのことですが、去年の8月に食道がんがみつかってすぐに手術をしたという60歳ぐらいのおっさんが話しかけてきました。はじめのうちは自分の方が先輩だと思っていろいろと教えてやるぜという雰囲気で話していたんだけど、いろいろ話しているうちにぼくが去年の2月には食道がんがみつかってずっと治療を続けてきているということが分かってしまった。するとそのおっさんは「なんだ三浦さんの方が先輩かあ」ととても残念そうに言うのです。「自分の方が先輩だと思ってたのになあ」ととっても悲しそうなのです。そのあまりにもショックを受けた様子に「いやあ、手術をしたのは○○さんのほうが先輩ですから」とフォローしても「そーいう問題じゃないんですよ」ととりつくしまもない。よーするになんで自分がこんな若造の後輩にならなくちゃいけないんだということのようです。
ここで不思議なのはこの先輩後輩の関係というのは同じ種類のがん患者のあいだでのみ成立するということです。たとえば食道がんの患者三人が話をしているときにすい臓がんのひとが入ってくるとします。すると「このひとは○○さんの後輩だよ」という話になってちょっと扱いが違うのです。
まあ、どーでもいいんだけどさ。こーいう人たちはどこに行ってもこーいう人間関係を作らないと生きていけないんだろうなあ。
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コメント
お初です。ポールと申します。
思わず笑っちゃいました。人間っていうやつは、つくづくオモロイ生き物だと再認識した次第。
これを期にまたお邪魔します。現場からのご報告楽しみにしております。
では、また!
投稿: ポール | 2007年9月23日 (日) 01時18分