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2007年8月 6日 (月)

食道全摘出

抜け毛をコロコロで掃除してるだけの無為な日々のひまつぶしに手術以降のおさらいなど。

今回の手術は食道の全摘出、胃挙上による食道の再建という食道がんの手術としてはスタンダードなものでした。食道がんの手術といったら、0期と呼ばれるほんの初期の小さながんが内視鏡によって切除される以外はすべてこの食道の全摘出が行われます。

ぼくの場合は、去年の2月にがんが発見された段階でもう4期でがん細胞が6センチ以上あって、放射線で徹底的に焼いて、内視鏡手術もやって、拡張もやって、何度も裂けたりして、もう食道はぼろぼろになっていたわけで、まあ全摘出もしょうがないかなという状態ではありました。

しかし、多くの食道がんの場合、1~3期と呼ばれるまだがんが小さい時期でも同じように全摘出が行われます。これはもちろんそうすることが一番生存率が高いという理由によるものですが、なんかもっと簡単な手術で済まないのかなあ、というのが全摘出を告げられた患者の素直な感想だと思います。胃とか肝臓とかだとがんの大きさによって半分だけ切るとか三分の一切るとかあるのに、なんで食道だとがんが小さくても大きくても同じように全摘出なのか。

これには大きくは二つの理由があります。ひとつは食道がんは「その生物学的悪性度により、高率に局所、及び遠隔転移を来す予後不良ながん腫」だということ。がんというのは「がん」という同じ名前で呼ばれてもそのできる場所によって大きく性質が異なる、ときにはまったく違う病気と考えた方がいい、そーいうものらしいのです。つまり食道がんの場合だと部分的に摘出しても再発転移が起こる可能性が非常に高く、近くに気管や心臓や大動脈があってそう何度も開いたり閉じたりできる場所ではないので再発しそうな部分はできる限り切っておくということ。まあ食道がんの場合はほかのがんと比べると全摘出しても再発転移の可能性はかなり高いんだけどね。

もうひとつが、っていうかこっちのほうが大きな理由なんだろうけど、なによりも食道というのは途中で切ってもうまくつながらないという技術的な問題です。食道の壁っていうのは薄くて柔軟性はあるけどとっても強い。これを途中で中抜き、例えばがんが3センチだから上下1センチずつみて5センチ切り取って縫い合わせても、元どおりにはうまくつながらない。これはもう50年以上医療技術が進歩しても解決できない問題なのだそうです。

腸の一部を切り取ってきて食道の代わりのするとかの方法もあるんだけど、何ヶ月かするとつなぎ目が腐ってきたりして使い物にならなくなったりすることが多い。けっきょくはがんじょうな胃をぐりぐりと伸ばして食道の代用品とする方法が現時点ではベストとされているわけです。いつか人工の食道とかが開発されればずいぶん変わるんだろうな。まあ、おれにはもうかんけーないけどね。

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