ひとさまの闘病記(13)
がんを告知されてショックじゃなかったか、という質問に対して清志郎はこう答えています。
病院から帰ってきてテレビを見ていたら、世の中では悲惨なことがたくさん起こっていてさ。それに比べたら、五十過ぎた男ががんになったぐらい、なんか普通のことなんじゃないかとか思っちゃってね。
この感覚というのは、ぼくもかなり近いものがあった。がんを告知されてたといっても実際にはまだそんなに痛みや苦しみがあるわけじゃないから、現実感が希薄だというのもあるんだとは思う。もちろん自分ががんになったなんてのは嫌なことで、治るもんなら治ったほうがいいと思っているんだけど、病院でテレビを見てて、例えばイラクでクラスター爆弾の破片を浴びて苦しんでいる子どもとかが出ていると、そっちを先になんとかしてやれよ、とか思っちゃうことがある。
もちろん、そんなきれいごとはぜんぜん現実的じゃないことぐらい分かっているし、そんなことを声高に言いたてようという気もない。けっきょくは自分が苦しまずに生きのびることしか考えていないということも分かっている。でも、自分ががんで、もしかしたらかなりやばいのかもしれないという現実に対してあまり深刻になれないというのは、けっこうあるんじゃないのかなあ。単に鈍いだけなのかなあ。
あと、清志郎はこんなことも言っていました。
おれの人生はこれまで楽しすぎたんじゃないか、とか思っちゃったんだよね。
ぼくの場合、これはないけどね。
そして、清志郎の喉頭がんは消え、12月からまた自転車に乗りはじめてもう700キロぐらい走ったらしい。また、食事療法のためベジタリアンになって、玄米と野菜ばかりの生活になったんだけど、正月ぐらいから魚を食べ始めてしまったそうです。
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