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2006年7月 7日 (金)

ひとさまの闘病記(8)

俳人の江國滋さんは、1997年2月に食道がんの告知を受け数回の手術の後、同年8月62歳で亡くなりました。

江國さんの場合は、それ以前に胃潰瘍でもやっていたのか食道がんになった時点で胃がほとんど残っていなかったため、通常行われる胃を細くして食道の代わりにする手術ができませんでした。そのため、食道を全摘出した後に大腸と小腸を引っ張り上げ、胸の皮膚と肋骨の間を通してのどにつなげるというダイナミックな手術になりました。

手術自体は無事終了したようですが、問題はそのあとで、つなげた部分がいつまでたってもくっつきません。これは食道がんの手術ではけっこうあることらしく、人間の体というのは縫えばどこでもくっつくというものではないようです。江國さんの場合は患部によく栄養が行っていなかったということらしいんだけど、ぼくのように放射線でめいっぱい焼いた場合も患部がもろくなっていて、そうなるケースはありがちだということでで、ひぃーな話ではあります。

このような場合はつなぎ直すしかないということで、何回も手術が繰り返されます。最初の手術は全身麻酔なので本人は眠っているうちにすべて終わってしまうのでいいんだけど、このつなぎ直しの手術は局部麻酔で行われます。意識があるのに食道のあたりを切ったり張ったりされるというのは……想像したくもないね。つないだはずの場所から食べたものが漏れる、もう一回つなぎ直そう、などということをやっているうちにがんがあちこちに転移して、江國さんは亡くなります。

このブログは闘病デイズなどとうたいながらいっこうに闘病らしい闘病をしないので、こうやってよその闘病記をもってきてお茶を濁しているんだけど、がん治療なんていつもいうように基本的には手術で切る・抗がん剤で殺す・放射線で焼くしかなく、はっきりいってがん闘病記なんてどれも似たようなものになります。それをわざわざ紹介してみようと思うのはそれなりに読み物としておもしろかったからです。

おもしろいというのは文章にそれなりの芸があるものなわけで、けっきょくは文章を生業とするひとのものが多くなってしまいます。この本はそのひとつの極にあるなあと思っていて、それはなによりも闘病中に詠まれた俳句のひとつひとつが、どんな饒舌な文章よりも食道がんという病気、その闘病の雰囲気を語っているところにあるのです。

生きて飲む流動食や夏近し

山葵もう食えぬからだとなりたるか(テレビ「わさび特集」を見て)

目にぐさり「転移」の二字や夏さむし

『おい癌めくみかはさうぜ秋の酒~江國滋闘病日記~』新潮文庫2000(初刊は新潮社1997)

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コメント

みゅうさんの文章も相当おもしろいんですけど・・・ひょっとして天職見つけちゃいました?

投稿: | 2006年7月 8日 (土) 00時48分

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