ひとさまの闘病記(7)
フリーライターの奥山貴宏さんは2003年1月、31歳で肺腺がんのIII期後半、手術不可能、平均生存年数2、3年の宣告を受けました。以来、自身のHP日記(後にブログも始める)でその闘病の日々をつづりはじめます。入退院の繰り返し、ハードな治療の合間にガンダムのプラモを作り、バイクに乗り、ゲームを楽しむ。雑誌記事などの仕事も続ける。そんなロケンロールな日々が話題になり日記は『31歳ガン漂流』ポプラ社2003として出版されます。これによってさらにファンが増え、奥山さんはテレビに出演したり、本も続編が出版され小説まで書くようになりますが、やがてがんが全身に転移し2005年4月に亡くなりました。33歳……ちょっときついね。
奥山さんは音楽・映画・パソコンなどの雑誌記事をメインにしたライターで、オルタナ系ロックやゲームやガンダムの話には理解不能のところもあるんだけど、ストイックな文章はとても好感が持てるもので、凡百のベタベタした闘病記とは一線を画するものではあります。
で、話しておきたいのは奥山さんの死後に起きたちょっとした騒ぎについて。奥山さんの闘病ライフは友人のビデオカメラマンが記録していて、その素材をもとにNHKがドキュメンタリー番組を放送しました。この番組はとても反響が大きかったようで何度も再放送されたようです。するとそれを見た池田晶子という哲学者が『週刊新潮』の連載エッセイで奥山さんのことを罵倒しまくったのです。
いわく、
個人のあられもない内面を、得体も知れない誰かに向けて吐露したいというその心性が、理解できない。気持が悪い。
から
パソコンに向かって内省するなど、どだい無理に決まっているのである。
まで、ありとあらゆることばでののしり続けています。
これに怒ったのが生前から奥山さんと交流があった勝谷誠彦さん。自身のブログで反撃をします。そして、それに呼応して数多くの奥山シンパがネット上で池田バッシングを始めたのです。奥山さんのファンにはそれだけHPやブログをやっている人が多かったということね。
見ていないので番組については何もいえないんだけど、少なくとも本を読んでいる限りでは奥山さんの姿勢は「個人のあられもない内面を、得体も知れない誰かに向けて吐露したい」というのとは対極にあると感じました。別に奥山さんを擁護するつもりもないんだけどこの池田晶子という人の書いていることはなにからなにまで気に入らないので、もう一年近く前の話ではあるんだけど、ちょっと難癖をつけておこうと思った次第で、でも長くなるので次回にします。
それにしても、勝谷誠彦という下品なおっさんが同い年だったのはちょっとショック。
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