ひとさまの闘病記(2)
わが病棟にフレッシュな新人ナースが八人もやってきました。朝、廊下をウロウロしているとあちこちからかけられる「おはようございます!」という新鮮な声にようやく春を感じる今日このごろで・・・・・・などというおじさん臭い前置きはこのくらいにして、久々にがんの話です。
作家の藤原伊織さんは、去年の二月に食道がんの告知を受けました。これは私が告知を受けたちょうど一年前のことです。がんがリンパ節の一部に転移していて進行状態がステージIVの前期、五年生存率が20%というのも同じです。藤原さんの場合がんが気管支まで浸潤していたということなので私よりも進んでいたのかもしれません。その藤原さんのがんが放射線と抗がん剤による治療のみで、九月にはリンパ節への転移も含めきれいに消え去ってしまったのです。抗がん剤による副作用も倦怠感がひどかったぐらいのようで、現在は以前のように酒・タバコ・博打三昧の日々を送ってられるようです。
ちょっと違うのは、藤原さんはがんが気管支まで達していて手術不可能だったため放射線と抗がん剤のみで完治を目指していたのに対して、私はまだ手術の可能性を残して治療しているという点です。そのため藤原さんの場合は私の倍ぐらいの量の放射線を照射していたのだろうと思います。放射線治療というのは人為的に患部を被爆させ、がん細胞を焼き殺すという作業なわけで、当然がん細胞だけでなく周囲の器官もぼろぼろになってきます。つまり放射線をあまりあてすぎると体が手術に耐えられない状態になり、がんが消えなかったからやっぱり手術しようというわけにいかなくなってしまうのです。食道がんの場合手術をしないで放射線化学療法のみで目に見えるがんが完全に消えるケースは七割といわれています。私のように手術の出来る可能性を残した少量の放射線照射だともっと下がるわけで、このさじ加減というのは過去のデータというのももちろんあるんだけど、最終的には医師の経験からくる勘しかないようです。
藤原さんも書いていますが、がん治療というのは同一手順を踏んでも効果がバラバラで、過去のデータによる治療の基準値が作れない、言い換えれば博打的要因が多くを占めるようです。がん患者を多く救っている医師は博打が強かったのだといえるのかもしれません。今回の私の治療も医師の博打強さにまかせるしかないなどといったら怒られるかな。なにしろ患者が博打めちゃめちゃ弱いもんで(^^;
(藤原さんの闘病エッセイは『オール読物』2005年6月号、『週間文春』2006年1月19日号に掲載されました)
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コメント
この患者さんメチャメチャ賭け事弱いんですよねぇ。
以前仕事でこっちに来たカメラマンさん、2時間程のルーレットで90万円勝って駐車場までセキュリティが付き添いしてくれました。なんでも済州島のカジノ以外は、負けた事がないんですって。
その人がやっていた賭け方の方法がやっとわかったら、ルーレット29連勝記録をうちたてました。彼の賭け方とはまた別の理論です。今度シドニーのカジノでコツ教えますよ。モンティニュで卓を囲んだのが懐かしいですね。またやりましょう。
投稿: 偽ジェイムス稲田 | 2006年4月 7日 (金) 03時15分
偽ジェイムス稲田さん、博打に強くなったにしては金持ちにならないねえ(^^;
本物のジェイムスによろしく言っといてよ。
投稿: みゅう | 2006年4月 9日 (日) 16時38分