仮釈放
というわけで、はれて二週間の仮釈放の身となりました。入院患者証がわりの腕輪がとれたのがとてもうれしい十条の空です。
放射線化学療法を選んだことについて賛否両論の御意見をたくさんいただきました。どちらの御意見もぼくのことを真剣に考えていただいてのもので深く感謝しています。
そんな声をひとつひとつ聞いてたり読んだりしていて、それぞれの意見のもとになっている情報に傾向があるということに気づきました。「手術をすべきだ」という人の多くは、身内や知人にがん患者(食道以外も含む)がいて手術で完治し今も元気でいるということ。これはこれでリアリティのある情報なので、それをすすめようという気持ちは分かります。
また「できれば手術はさけるべきだ」という人は、本やインターネットで食道がん体験記(手術をしたケースもしなかったケースもある)を読んで、食道がん手術のハードさ・術後の患者の苦しみ・手術をしたからって必ずしも助かるわけじゃない、といった類の情報を仕入れた人で、ぼくもこの一人ですね。こういった情報には漢方薬の宣伝めいた怪しいものもあったりしますが、多くは信ずるにたる食道がん患者の生の声だと思いますし、なによりも圧倒的な数があります。なかには手術後何年か続いた日記の最後にこの患者は亡くなりましたという遺族による記述があり、うーんとうなってしまうこともあります。
これはどちらの情報がどうだこうだという話ではなくて、がんというのはそれだけ多様性のある個人的な病気だということを裏付けるものだと思うし、がん治療とはこういうデータがあるからこうすべきだということがいえないバクチ性の強い行為なのだなあと思ってしまう次第なのではあります。
ステージⅣというのはがん全体でも五年生存率が20%とされ、食道がんの場合はこの数字がもっと下がるといわれています。手術をしたからってこの数字が劇的に上がるわけではないのは確かなようです。あまり余計な情報を入れずに、手術をすれば助かるという伝説を無邪気に信じたままで手術を受けてしまったほうが楽だったのかなと思うこともあります。実際この二ヶ月の入院中にそういう人も何人か見ました。手術を受けたけど何度も病院に戻ってきて苦しんでいる人も見ました。手術を受けずに抗がん剤の副作用で苦しんでいる人も見ました。まあ、そういうことなんですよね。
ちなみに水虫は着実に治り続け、もう消える寸前です。がんにも見習って欲しいところです。
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