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2006年4月

2006年4月25日 (火)

仮釈放

というわけで、はれて二週間の仮釈放の身となりました。入院患者証がわりの腕輪がとれたのがとてもうれしい十条の空です。

放射線化学療法を選んだことについて賛否両論の御意見をたくさんいただきました。どちらの御意見もぼくのことを真剣に考えていただいてのもので深く感謝しています。

そんな声をひとつひとつ聞いてたり読んだりしていて、それぞれの意見のもとになっている情報に傾向があるということに気づきました。「手術をすべきだ」という人の多くは、身内や知人にがん患者(食道以外も含む)がいて手術で完治し今も元気でいるということ。これはこれでリアリティのある情報なので、それをすすめようという気持ちは分かります。

また「できれば手術はさけるべきだ」という人は、本やインターネットで食道がん体験記(手術をしたケースもしなかったケースもある)を読んで、食道がん手術のハードさ・術後の患者の苦しみ・手術をしたからって必ずしも助かるわけじゃない、といった類の情報を仕入れた人で、ぼくもこの一人ですね。こういった情報には漢方薬の宣伝めいた怪しいものもあったりしますが、多くは信ずるにたる食道がん患者の生の声だと思いますし、なによりも圧倒的な数があります。なかには手術後何年か続いた日記の最後にこの患者は亡くなりましたという遺族による記述があり、うーんとうなってしまうこともあります。

これはどちらの情報がどうだこうだという話ではなくて、がんというのはそれだけ多様性のある個人的な病気だということを裏付けるものだと思うし、がん治療とはこういうデータがあるからこうすべきだということがいえないバクチ性の強い行為なのだなあと思ってしまう次第なのではあります。

ステージⅣというのはがん全体でも五年生存率が20%とされ、食道がんの場合はこの数字がもっと下がるといわれています。手術をしたからってこの数字が劇的に上がるわけではないのは確かなようです。あまり余計な情報を入れずに、手術をすれば助かるという伝説を無邪気に信じたままで手術を受けてしまったほうが楽だったのかなと思うこともあります。実際この二ヶ月の入院中にそういう人も何人か見ました。手術を受けたけど何度も病院に戻ってきて苦しんでいる人も見ました。手術を受けずに抗がん剤の副作用で苦しんでいる人も見ました。まあ、そういうことなんですよね。

ちなみに水虫は着実に治り続け、もう消える寸前です。がんにも見習って欲しいところです。

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2006年4月24日 (月)

三者会談の結果は?

お騒がせしておりますが、先ほど三者会談が終わりました。
結論から言ってしまうと、放射線化学治療続行です。

消化器外科の先生(以下【外】)のスタンスは先週火曜日に説明してくれた時と変わらず、手術した方が治る確率は高いのでこっちをすすめるけれども、切らずに治ってしまう可能性もわずかながら出てきたので選んでチョ、というものです。いっぽう放射線科(以下【放】)は放射線だけで直る可能性は限りなく少ないので、より確かな手術を選ぶべきだと主張します。

単純にこれだけで考えると【放】の言うとおり手術をすべきだということになるわけで、さらに【放】は、ここまで手術を前提に放射線治療をやってきて今さら方針変更はむずかしいとか、ほかに転移する可能性が高いとなどと、放射線でいくことにネガティブな要素を並べます。すると【外】が「それは事実と違う」と【放】の言うことに反する治療方法やデータをあげていくという、【放】vs【外】対決みたいな展開になってきたのです。【外】は手術をしたほうがいいとは言いながらも、手術なしで治ることの可能性を強調するという不思議な状況で話し合いは進みました。けっきょくは【放】がそれ以上説得力のある材料を出せずに放射線でいってみようということになりました。

今回のドタバタは、ふつうは切りたがる外科が手術しないことの可能性を強調し、逆に放射線科が手術にこだわるという不思議な展開でした。もちろんすぐに切らないことを選択したからといってそれで安心などということはなく、次の放射線化学治療が終わってがんが消えなければ手術になる可能性はあるし、その場合のリスク(声を失う、がんを取りきれない、手術中に死んじゃう)は何倍にもなります。手術が不可能になって、転移が進み、いろんな抗がん剤に苦しみながら死んでいく、なんてこともあるわけです。

でも、しょうがないよ。もう決めちゃったんだもん!

てなわけで明日退院、5月8日に再入院です。

最後に最新情報を。前に書いた藤原伊織さん(放射線化学療法のみで食道がんが消えた)はがんが再発し手術をしたそうです。うーん(^^;

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2006年4月21日 (金)

ちょっと明るい話題を

けっきょく三者会談は来週に持ち越しになりました。あまりブルーな気分でウィークエンドを過ごすのもなんなので、明るい話題を少々。

食事がきのうから通常食になり、もうふつうのご飯を食べています。もちろんまだよく噛まないとつかえてしまうこともあるんだけど、いい感じです。寝る時にベッドを水平にしてもつばが逆流したりすることもなくなりました。でも、水平よりもちょっと頭の方を上げ気味にしたほうが背中が痛くならないのはマットレスのせいかな?

そしてビッグニュースが!
実はアルコールがぜんぜんOKだということが判明しました(^^;
前の病院にいる時にダメだと言われたのと、別に飲みたくもならなかったのでそのままでいたのですが、きょうの手術の話でちょっとそんな気分になったので、三者会談が来週になったことを伝えにきた消化器外科ナンバー2の先生に聞いてみたのです。いちおう模範的優等生患者としてはひかえめに
「つかぬことをお聞きしますが・・・・・・」
と、愚かな質問だということは重々承知の上でお聞きしてるのですが、という態度で聞いてみたら、あっさり
「いいですよ」
と言われてしまったのです。それだけならよかったのですが、あまりに愚かそうに見えたのか、
「でも、酒臭い息で病棟に帰ってくると怒られるからね」
と釘をさされてしまいました(涙)。
ストレートのウイスキーとかの強い酒だと放射線をあてた患部が痛んだりするかもしれないからやめといたほうがいいだろうけど、アルコールじたいは問題ないということでした。まあ、そんなに大騒ぎすることでもないか(^^;

とはいえ、体力も落ちているのでそんなに飲むことはないので御心配なく。

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なんと!

とりあえず手術なしになったということで、よかったねというコメントやメールをたくさんいただきまして、ありがとうございます。しかし!なんと・・・・・・

きょう放射線科に呼ばれて、放射線では治る可能性が少ないので手術をしてくれと言われたのです。なんと、予想外の展開です。こちらとしてはもうそういう気は失せているので嫌だと言い続け、説得は平行線のまま二時間近くに及びました。けっきょく、今晩あるいは来週早々に火曜日に説明をしてくれた消化器外科の先生も入れて話し合うことになりました。ようするに火曜日の段階では消化器外科の先生が放射線科の意見を聞いていなかったということになるんだろうけど、なんか疲れてしまってため息ばかりのフライデーナイトです。

果たして、へらへらしたがん患者は説得されるのか?

動きがあり次第また報告します。てなわけで今週末の退院どころではなくなったのですが、とりえず明日の10:00から日曜の17:00まではまた気分転換に外出していまーす。

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2006年4月18日 (火)

治療方針決定!

先ほど担当部長から検査結果および今後の治療方針について以下のような説明がありました。

1.手術が可能になるぐらいまでがんを小さくするという治療当初の目的は果たしており、一ヶ月後であればじゅうぶん手術にのぞめる
2.ただ食道及びリンパ節に転移したがんがどちらとも当初の期待以上に小さくなっており、放射線化学療法だけで消えてしまう可能性もかなりでてきたので、治療方針を変更して根治的放射線化学療法(とりあえずは手術なし)に切りかえることもできる
それぞれに長所短所はありますが "Choice is yours!" というわけです。

一ヶ月後に手術した場合
《長所》
1.切除できれば局所のがんに関しては確実に消える
2.放射線治療を続けたのちの手術よりもリスクが少ない
《短所》
1.手術による体への負担が大きい(嫌だ!)
2.以前の記事に書いた胃を食道の代わりにする手術のため、食べられる量が極端に少なくなる(嫌だ!)
3.ものがうまく飲み込めなかったり、飲み込んでもすぐに嘔吐してしまう状態がずっと続く可能性がある(嫌だ!)

放射線化学療法を続けた場合
《長所》
1.手術による負担がなくなる可能性が高い(あたりまえのことだけどこれがいちばん大きいよね)
2.手術しないですめば以後の食生活への影響が少ない(これもとっても大きい)
《短所》
1.がんが消えない可能性もある(三度目の放射線治療は体がもたないので不可能)
2.この段階及び一度消えて同じ場所にがんが現れた場合手術が困難になる。手術中に死んじゃったり、一生がんを抱えたまま生きていく(早く死ぬ可能性が高い)ということですね

迷うことなく放射線化学療法を続けることを選びました。痛いの嫌だもん(^^;
切っても切らなくても他の場所にがんが出てくる可能性は同じくらいあるということだしね。放射線の量はこれまでよりもずっと多くなるとは思うけど、もうがんがん放射線を浴びてゴジラ男になってやるぜ!

てなわけで、数日中に退院、放射線治療の予約がつまっているので期日ははっきりしないけど一ヶ月とかもうちょっと先に治療再開ということになりました。限りなくただの閑人に近い生活がまだまだ続くわけです(^^;

長くなりましたが結果報告でした!

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2006年4月17日 (月)

チューブが抜けた!

きょうは朝からレントゲン撮影・エコー検査・CT撮影とイベントがあり、久しぶりに入院患者らしいというか、ただの閑人じゃないぞの一日でした。また、二ヶ月つきあった首のチューブもついに抜けました。こいつは簡単に外れないように首の皮膚に縫い付けてあったので、ちょっと首をひねっただけでもひいひい痛いよう状態だったのです。おかげで寝返りがうてず首や肩がこってしょうがなかったのからも解放されそうです。

それにこのチューブは二月に最初に入った病院で新米の医師が何度も失敗して、最後はベテランの医師を呼んでようやく血管に入ったもので、負の遺産(それほどのものでもないか(^^;)のようなものだったのです。あの時は、血管が見つからなくて、ふつうは五分ぐらいで終わる作業に一時間もかかりやがって、何度もグサグサ刺しやがって、途中であきれた看護婦が「私がやります」とか言ってやってみたけどそれでもうまく入らなくて、終わってから「やっぱり痛かったですかねえ?」とか間抜けなことを聞きやがって、あのあと一週間以上痛かったぞ、ばーろー!

でも、病棟の廊下で首にチューブを刺して点滴のスタンドを押しながら歩いている人を見ると、数日前のことなのに自分も以前はああだったよなあと遠い昔のことに思えてしまうのが不思議ではあります。べつに病気が治ったわけでもないのにね。

食道の通りも少しずつですが良くなっているようで、きょうは検査のために一食抜いたのでお腹がすき、売店でメンチカツサンドとカップヌードルを買ってきて食べるという充実の食生活でした。これで一時退院してもそこそこ普通の閑人の生活が送れそうです(^^; 今回のように治療が長期にわたる時には、いかに普通の生活を維持するかが大事だとはいいますが、なんか分かるような気がしますね。

明日18日(火)18時に主治医から今後の説明があるようです。さあ、検査結果はどう評価されるのか?かたずをのんでお待ちください・・・・・・(^^;

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2006年4月16日 (日)

第一ラウンド終了

五週間におよぶ放射線&抗がん剤治療第一ラウンドが終了しました。自覚症状としては、よく噛んでかたちがなくなってしまうものであればけっこう食べられるようになったので食道のがんはそれなりに小さくなっているようですが、ちょっと油断してあまり噛まずに飲み込んだり量が多かったりするとすぐに詰まってしまうので、まだまだ食道の大部分がふさがれているのは変わりないようです。それでもつばも自然に飲み込めるようになって寝る時のベッドもほぼ水平になってきたし、首のチューブは刺したままですが点滴も外れたのでたいした出世です。月曜からの検査で再評価をし今後の治療方針が決まるわけですが、すぐに手術ということにでもならければ今週中に一時退院ということになりそうです。

このブログを読んでいるとただの閑人みたいだというメールをもらいましたが、これで退院してしまうともっとただの閑人になってしまいそうなんですけど。まあいいか(^^;

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2006年4月14日 (金)

手術の話(2)

同室の患者のうち三人が食道がん仲間なんだけどそのうちの一人(7?歳)がいま手術を受けています。基本的な手術の内容は一昨日までに主治医から説明されていたみたいだけど、昨日は下っ端の医師をはじめ手術室担当看護士だのICU担当看護士から病棟のナースまでが入れ替わりやってきて手術及び術後のこまかい説明をしたりバタバタしていたので、自分が手術を受けるわけでもないし、この先手術すると決まったわけでもないのに、なんかずっとドキドキしています。

聞こえてくる断片がなんかとても痛そうな話が多く、ついついダンボになっていちいち「ひぃー」とか思いながら盗み聞きしてしまいました。

「鎖骨の下に栄養剤を入れる点滴を刺しますが、これは見えない場所に見当でいれるので一発ではうまくいかずに何度もさすことが多いですが、痛かったらどんどん麻酔を打ちますので言って下さいね」(ひぃー(^^;)

「肺は邪魔になるので片方の肺をしぼませた状態で手術をします。手術後は苦しいですが、自分で深呼吸をしてこの肺をふくらませてもらわなくてはいけません(ひぃー(^^;)」

「手術後はもちろん痛み止めの薬は入れ続けますが、これで痛みが全てなくなるわけではないので多少の痛みは我慢してもらうことになります(これがネット上の体験記を見るとみんな地獄の苦しみだったといってるぞ!ひぃー(^^;)」

この人は72歳、糖尿・心臓病あり。がんもまだ比較的初期で食事なんかもちょっとつっかえ始めたぐらいなんだけど、やっぱり食道をばっさりと全摘出するようです。今朝は早くから家族・親戚・知人・友人が集まって万歳でもしそうな勢いで患者を送り出していました。これもなんだかなあですが、とにかく手術の成功を祈ります。

最後に業務連絡。また15日(土)午後から16日(日)午後まで外出しています。

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2006年4月12日 (水)

DVDの話(1)

少し食事が出来るようになってきたんだけど、抗がん剤を入れなくちゃいけない関係から栄養剤の点滴も続いていて体重増加中です。当然腹が出てきて、がん・水虫・出腹という三重苦の日々が始まりました。

抗がん剤の副作用が軽いとはいってもさすがに四週も続けるとさすがにちょっとはたまってきたようです。体がだるくて集中力が持続せずあまり映画を見たり本を読む気が起こらないので、ここんとこ軽めの音楽DVDばかりぼおっと見ています。

そんな中でお気楽感No1で楽しめたのがリンゴ・スター&オール・スター・バンドの"WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS"。リンゴが1989年から2003年にかけて同世代のロック・スターを集めて世界をツアーした記録で、年代によって座組みは違うんだけどどの年のメンバーも豪華絢爛。例えば冒頭何曲かのメンツ(たぶん1989年)を並べてもビリー・プレストン、レヴォン・ヘルム、リック・ダンコ("The Weight"ではガース・ハドソンが加わる)、ドクター・ジョン、ジョー・ウォルシュ、ジム・ケルトナー、ニルス・ロフグレン、クラレンス・クレモンズ、ザック・スターキーだったりして、これだけでお腹いっぱい、どこを切ってもおいしい仕上がりになっているのです。

ふつうこの手のライヴだと演奏はお粗末で「あの人はいま?」的な単なる懐メロ大会になってしまうことが多いんだけど、ここではみんなそれなりのレベルを維持していてけっこう楽しめます。また、このおっさん誰だろうと思うと、マーク・ファーナーだったりトッド・ラングレンだったりピーター・フランプトンだったりしてけっこう笑えたりもするのです。ここらへんって70年代のレコードジャケットで顔を見て以来だったりするからなあ。

最後にこれだけのメンツの中でいちばん存在感があるなあと思ったのがニルス・ロフグレン。Eストリートバンドの時と同じで派手なソロとかはないんだけど、この人が入ると演奏が締まるというか、なんか気持ちよくさせてくれるミュージシャンズ・ミュージシャンですね。

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2006年4月10日 (月)

ひとさまの闘病記(3)

重湯とスープだけの流動食だった食事が金曜日に五分粥、きょうから全粥食に出世しました。ほぼ二ヵ月ぶりの固形食にこの数日ささやかな感動を味わっていたのですが、それに水をさす出来事が。ちょっと足の裏が痛むので皮膚科の外来に行ったら、水虫を宣告されてしまいました。正しいおじさんの道へまた一歩進んでしまったようで、なんかかっこ悪くて、ちょっと悲しい月曜日です(^^;

土曜日の夜、教育テレビでがんをテーマにした二時間の番組をやっていました。以前だったらこのたぐいの番組は気にもしなかったと思うのですが、がん患者のはしくれとしてついつい見てしまい(マグロや寿司の番組とザッピングしながらだけど(^^;)ちょっと不愉快になってしまいました。

抗がん剤の副作用に苦しむ患者と共に闘う家族、がんを克服したスポーツ選手、がんと闘いながら「いのちの歌」を歌い続けるおじさんと彼を支える親友、などを取材した「感動的な」VTRを見ながら、識者やがんを体験した芸能人がしたり顔でトークするというありがちな内容で、この番組を見て感動したり、「勇気をもらったり」する人がいるらしいからそれはそれでいいんですが、訳知り顔のアナウンサーに「私たちもがん患者のみなさんに支えられて生きているのかもしれません」などとまとめられるとついつい「別におまえなんか支えてねえよ」と因縁をつけたくなっってしまうのでした。

そんな番組の中で唯一きれいごとではない正しいことを言うが故に少し浮いていたのが森達也さんでした。「誰にでも最後は来るもので、がん患者にはそれが少し早くきたり知らされたりしてしまったにすぎないのだから、がんにかかった人を美化したり特別視するべきではない」というような実にまっとうな発言に、スタジオにいる「良識ある」、「がんと闘う患者やその家族をいっしょうけんめい美化しようとしている」人たちはどうりアクションしていいのか分からないというような場面がいくつかあり、ちょっとスカッとする部分でもありました。

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2006年4月 7日 (金)

手術の話(1)

食道の通りが順調によくなってきて、今日はパンとチーズをゆっくりずつながら食べることが出来ました。同時に被爆により患部周辺が焼けてきたことによる痛みもでてきましたが、いまのところ食い意地が勝っているようです(^^;

明日8日(土)15:00から9日(日)15:00まではまた外出して何が食べられるか実験してきます。

前回手術についてちょっとふれたのでその話を。食道がんの手術は、早期の発見で食道の壁面にがんがくっついている程度(ステージI)であれば内視鏡による手術で一時間ぐらいで済んでしまい、再発や転移の可能性も低く一ヶ月程度の入院でかたがついてしまうようですが、あるていど進んでしまうと消化器の手術ではもっとも困難で、すい臓がんと並んでがんの東西両横綱と呼ばれる(ホントかよ(^^;)たいへんな手術になってしまうようです。

手術は食道の全摘出が基本で、転移のあるあるいはその可能性のある周囲の器官臓器も一部あるいは全部取ってしまいます。これは比較的初期のステージIIでも私のようにかなり進行してしまったステージIVでも変わりないようです。作業としてはまず首から腹までざっくりと切り開きます。必要に応じて肋骨や胸骨を切断し、食道を首の下から胃の上まで(時には胃の一部も)切り取ります。この時がんが上のほうにあった場合、声帯も取ることになります。私の場合ぎりぎりのようですが、声帯が助かってもそこにつながる神経の多くは取ってしまうのでひどい声になるのはさけられないようです。

次に食道再建の作業です。胃の神経を取り、上半分をぐりぐり細くのばして食道の代わりとして咽喉まで持ち上げて接合します。このような荒っぽくかつ複雑な手術なので時間も8~12時間はかかり、手術中の死亡率もそれなりにあるようではあります。術後の回復もかなり個人差があるようで、ネットにある体験記をいくつか見ただけでも集中治療室に1~5日、退院まで1~6ヶ月、社会復帰まで3ヶ月~3年とさまざまです。こんな大変な手術なのに、簡単に切ろうという医者がけっこういるようで、そんなのにあたった患者はたまりませんな。

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2006年4月 5日 (水)

ひとさまの闘病記(2)

わが病棟にフレッシュな新人ナースが八人もやってきました。朝、廊下をウロウロしているとあちこちからかけられる「おはようございます!」という新鮮な声にようやく春を感じる今日このごろで・・・・・・などというおじさん臭い前置きはこのくらいにして、久々にがんの話です。

作家の藤原伊織さんは、去年の二月に食道がんの告知を受けました。これは私が告知を受けたちょうど一年前のことです。がんがリンパ節の一部に転移していて進行状態がステージIVの前期、五年生存率が20%というのも同じです。藤原さんの場合がんが気管支まで浸潤していたということなので私よりも進んでいたのかもしれません。その藤原さんのがんが放射線と抗がん剤による治療のみで、九月にはリンパ節への転移も含めきれいに消え去ってしまったのです。抗がん剤による副作用も倦怠感がひどかったぐらいのようで、現在は以前のように酒・タバコ・博打三昧の日々を送ってられるようです。

ちょっと違うのは、藤原さんはがんが気管支まで達していて手術不可能だったため放射線と抗がん剤のみで完治を目指していたのに対して、私はまだ手術の可能性を残して治療しているという点です。そのため藤原さんの場合は私の倍ぐらいの量の放射線を照射していたのだろうと思います。放射線治療というのは人為的に患部を被爆させ、がん細胞を焼き殺すという作業なわけで、当然がん細胞だけでなく周囲の器官もぼろぼろになってきます。つまり放射線をあまりあてすぎると体が手術に耐えられない状態になり、がんが消えなかったからやっぱり手術しようというわけにいかなくなってしまうのです。食道がんの場合手術をしないで放射線化学療法のみで目に見えるがんが完全に消えるケースは七割といわれています。私のように手術の出来る可能性を残した少量の放射線照射だともっと下がるわけで、このさじ加減というのは過去のデータというのももちろんあるんだけど、最終的には医師の経験からくる勘しかないようです。

藤原さんも書いていますが、がん治療というのは同一手順を踏んでも効果がバラバラで、過去のデータによる治療の基準値が作れない、言い換えれば博打的要因が多くを占めるようです。がん患者を多く救っている医師は博打が強かったのだといえるのかもしれません。今回の私の治療も医師の博打強さにまかせるしかないなどといったら怒られるかな。なにしろ患者が博打めちゃめちゃ弱いもんで(^^;
(藤原さんの闘病エッセイは『オール読物』2005年6月号、『週間文春』2006年1月19日号に掲載されました)

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2006年4月 3日 (月)

大食い

テレビの大食い番組が好きで、きのうもテレビ東京『元祖!大食い王決定戦~新爆食女王誕生戦』をたっぷり二時間見てしまいました。これは、いま自分がなんにも食べられないあれもこれも食べたいよう、の夢想妄想状態にいるが故の自虐的な行為というわけではなくてなぜか前から好きだった番組なのです。この大食いや『でぶや』とかのテレ東チープグルメ路線はうんちくや能書きがほとんどなく、ただひたすらおいしそうなものをおいしそうにたべるところをひたすら見せるだけという、他局の鉄人系あるいは美味しんぼ系グルメ番組などとは違う道を行きますよというのがはっきりしていて、ただぼおっと白痴的に見ていられるわけで、これがテレビの根源的なありかたのひとつなのではないかと思ったりもしてしまうのです。

百グラムのソーセージ三十五本だの、エビフライ百十六本だの、沖縄そば二十二杯だのという恐ろしい量の料理をスリムな女性が食べつくす光景は、バカバカしくてとても愚かだとは思うんだけど、痛快で壮絶でついつい見入ってしまいます。前回だったかこの番組の出場者のことを「神に選ばれた」と形容したナレーションがありましたが、たしかに山本キッドよりはこいつらのほうが愚かですごいなとも思えるところもあります。『TVチャンピオン』から独立し、スタジオやVTRでのこざかしい演出もなくなりただひたすら大食いを見せる番組になったことで、すっきりと見やすくなり番組としての迫力も増した感じだし、テレビ東京のチープ愚か路線をもっと見たいなあと思う一視聴者でした。

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